フランス的ヴァカンスとは?《版画》

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夏休み、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

制作をお手伝いさせていただいている、「bis」Webサイトにて、ちょっとしたブックレビューをつくりました。
https://bisweb.jp/column/4674

夏はサガンが読みたくなります。
豪華なヴァカンスに出かけなくても、OTTAVAを聴いて図書館に出かければそれで十分って毎年思います。
……とは言いつつ、そろそろ大人なので、夏は音楽祭に出かけて非日常を過ごしたい、という欲も出てきたので、来年はきちんと計画するつもりです。

 

ヴァカンス、と言って真っ先に思いつくのは、月並みですがドビュッシー

 

 

グラナダの夕べ」は、その名の通りドビュッシーがスペインのグラナダ県を思って書いた曲。冒頭からハバネラのリズムで始まり、けだるくも優美な旋律は、グラナダ県にあるアルハンブラ宮殿を彷彿とさせます。スペインの作曲家マニュエル・ド・ファリャは、この曲を聴いて「もっともスペイン的な作品である」と評価しました。

……なのですが、実のところ、ドビュッシーは生涯で一度もスペインに訪れたことがなかったそうです。

フランス人にとって、スペインはもっとも身近なヴァカンスの土地であり、異国を感じられる国。
曇りがちな空の下で過ごすパリの人々にとって、スペインの眩しい日差しや地中海の美しさは、必然的に憧れてしまうものなのかもしれません。

 

◾️Disc Guide

ナポリ出身、フランスで活躍したピアニスト、アルド・チッコリーニの作品集。《版画》とともにフランス印象主義音楽を確立したとも言われている、《映像》も収録されています。
 

 

目には見えない大切なもの『マダム・キュリーと朝食を』

 

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「東の都市」へと流れて来た猫と、震災の年に生まれた少女・雛の物語。目に見えないはずの“放射能”を、猫は「光」として、少女の祖母は「声」として受け止める。 時空を自在に行き来し、見えないものの存在を問いかけた長編小説。

 

この物語の一番のキーはきっと、「放射能とエネルギー」。 舞台は東日本大震災から十数年がたった東京。 『家庭料理』の中に記されたキュリー夫人のメモや、主人公の母親がボイスメモに残したエジソンの記録など、実在するエネルギー史を数多く引用し、私たちの生活と「エネルギー」について考えさせられるストーリーとなっています。

作中では、原発のことをどちらかというと「悪」として捉えているようで、キュリー夫人ラジウムを発見した瞬間の描写が、どうしても悪夢の始まりのようであったことに、ほんの少しの恐怖を感じました。
その一方で、どこかフラットな見方もしているようにも感じます。

日本に住んでいる以上、原子力放射能の問題は一生考えねばいけないことだと思います。 物語は放射能をひとつのファンタジーのように扱っているけれど、現実はファンタジーではない。

消えない光があるなんて、きっと星みたいだろうね。
その光というやつは、妖精みたいに、それは素晴らしく光るらしい。マッチやロウソクや電球みたいに消えたりしない。
永遠に。

エネルギーは、人の目には見えないけれど、決して欠かすことのできないもの。 目を背けずに、共存する方法を考えなければと思わされる作品です。

 

 

マダム・キュリーと朝食を

マダム・キュリーと朝食を

 

 

『シーモアさんと、大人のための人生入門』(2014・アメリカ)

 

Today is #WednesdayWatching

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毎週水曜日は映画を観る日。

 

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シーモアさんのレッスンは優しくて、温かい。
ピアノと一緒に、人生のいろいろなことを教わっているような気分になる。

 

シーモアさんと、大人のための人生入門』(原題:Seymour: An Introduction)はイーサン・ホーク初のドキュメンタリー映画。アーティストとして、一人の人間として行き詰まりを感じていたイーサン・ホークは、ある夕食会で当時84歳のピアノ教師、シーモアバーンスタインと出会い、彼のドキュメンタリー映画を撮ろうと決める。

ピアニストとしての成功や恋のエピソード。朝鮮戦争従軍中に、戦地にピアノを運んでもらい、ピアノ・リサイタルを行なったこと、仲間を失ったこと。自分が目指すものと、聴衆が求めるものの溝が埋まらなかった葛藤、舞台に出ることの恐怖心。
決して平坦ではなかった人生を、美しいピアノの音楽ともに語ってくれた。

 

音楽と人生は相互に作用する、という言葉がとても心に留まった。 それは演奏家だけでなく、聴き手である私たちにとっても同じこと。
その日その時で聴きたい音楽が違うように、生活や環境、周りの人間関係に少しずつ変化が出るに連れて、自分にとって心地の良い音楽も変わっていく。
音楽はきっと、人生の縮図だと思う。

 

じぶんの心と向き合うこと、シンプルに生きること、成功したい気持ちを手放すこと。
積み重ねることで、人生は充実する。

 

彼が「どの曲よりも美しい」と語っていた、シューベルトのセレナーデを聞きながら、余韻に浸ろうと思う。

 

 

心で弾くピアノ―音楽による自己発見

心で弾くピアノ―音楽による自己発見

 

 

 

 

 

クラシック女子のクローゼット vol.3*VIVETTA

 

コンサートに出かけるときは、とびきりのお洒落をしていきたい。 だけど、コンサバティブなお洋服で済ませるのもつまらない。 そんな女の子のためのファッション・ガイドをつくってみました。

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今日紹介するのは、VIVETTAのお洋服。Roberto Cavalliでキャリアを積んだVivetta Pontiが、2009年よりパリでスタートしたブランドです。

繊細な刺繍技術やイタリア製のファブリックを使用したハイクオリティはもちろん、優雅だけどどこかチャーミングな遊び心のあるデザインや、レトロ感のあるテキスタイルも人気の理由。
Alexa ChungやAnna Dello Russoなどのファッション・アイコンや、日本でも様々なモデルやアイドルから愛用されています。

 

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VIVETTAといえば、個性的なデザインの襟♡ ふんわりとしたギャザーとベビーピンクが女の子らしさを高めます。

 

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ヴィンテージプリントがガーリーなワンピース。 Aラインのタイトなデザインが、甘さを少しだけ抑えてくれます。

 

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ベロアのワンピースとフリルブラウスの組み合わせがどことなくプレッピー。 ローファーを合わせて上品に、だけどキュートさも忘れません。

 

www.vivetta.it

 

このドレスを着て出かけたいコンサート

N響オーチャード定期 2016-2017シリーズ 第95回

Bunkamuraオーチャードホール/2017年7月9日(日)15:30開演
*14:45頃よりN響メンバーによるロビーコンサートあり

<INFORMATION>
◽︎プログラム エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調 op.85 ブラームス交響曲 第1番 ハ短調 op.68
◽︎出演 マルティン・ジークハルト(指揮),クレメンス・ハーゲン(Vc) http://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/nkyo16_17.html

指揮者でありながらウィーン交響楽団の首席チェロ奏者であり、ソリストとしても活躍するジークハルトと、室内楽やオーケストラとの共演で数多くの舞台に立つチェロ奏者ハーゲン。この二人がチェロの名曲、エルガー交響曲をどのように仕上げるのか注目したい。

 

 

『エトワール』(2000年・フランス)

 

Today is #WednesdayWatching

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毎週水曜日は映画を観る日。

 

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オペラ座には偉大な歴史がある。美しききらびやかな舞台で、観るもの誰もを魅了するパリ・オペラ座バレエ。そんなオペラ座の裏で繰り広げられている闘いや葛藤、残酷なドラマを見つめたドキュメンタリー映画が『エトワール』である。

オペラ座には厳格な階級社会が築かれている。カドリーユからはじまり、コリフェ、スジェ、プルミエ・ダンスール/ダンスーズ、そしてエトワール。 エトワール(=星)こそ、誰もが憧れるダンサーの最高位だ。
カドリーユからキャリアを始めたダンサーたちは、年1回行われる試験を受け、それに合格することで次の階級に進む。
ただし、エトワールだけは別。総裁の指名を受けたものだけが、エトワールを名乗ることができる。

 

そもそもバレエ団に入るまでからすでに、熾烈な争いははじまっている。オペラ座バレエ学校を卒業しても、コールド(群舞)に空きがなければ入団することができない。卒業証書だけを手にして、学校を去っていくものも多くいるという。

入団できなかったら、どこに就職すればいいんだろう。
もしバレエができない体になってしまったら……。
引退したらどんな仕事をしようか……。
彼女たちが時折見せる表情や言葉には、生々しい悩みがあった。

 

わたしが特に印象に残ったのは、当時26歳のオーレリー・デュポン*のインタビューだ。 若くしてエトワールになった彼女は、常に注目され、人から過剰な敬意を向けられることもあった。
"Qu'est-ce que c’est la vie?(──これがあるべき姿?)"と自分に問いかける彼女の姿は、オペラ座の壮絶な舞台裏を物語っていたような気がする。

エトワールになることだけが幸せではない、と思う。でも、彼女たちはまっすぐに、淡々と高みを目指していく。それはバレエを愛する彼女たちにとって当たり前のことで、努力とかつらい、などの感情はないのかもしれない。

心身を削って、傷つけて、それでも輝こうとする彼女たち姿は、「星」という言葉が本当に似合う存在だ。

 

エトワール デラックス版 [DVD]

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*オーレリー・デュポン(Aurélie Dupont ,1973年1月15日 - ):フランス・パリ出身のバレエダンサー。2015年に42歳で現役ダンサーを引退、2016年2月4日にはパリ・オペラ座バレエ団芸術監督に就任。

 

 

献立には人生をかけて『やわらかなレタス』

 

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ごはんを楽しめるひとは人生を楽しめるひとだと、どこかで聞いたことがあります。

「ごはんの描写を美味しそうに書ける作家の作品はハズレなし」という自論を持ってるのですが、江國香織さんも外せません。 『やわらかなレタス』(文藝春秋)には、食事にまつわるショートエッセイを40編収録しています。

ごはんの写真はもちろん、イラストのひとつさえも載っていません。それどころか、食べ物のシズル感を事細かく説明せいているわけでもないのに、読んでいるだけで食卓の様子や頬張ったときの感情がじんわりと伝わってくるのだから、本当に不思議です。

私なら、断然鱈になりたい。
日本酒をお燗して、鱈ちりを食べながら思う。知性も品位もありそうだし、身が解けるところがいいもの。
ねぎや白菜を入れる人もいるけれど、私は鱈ちりに野菜は入れない。お豆腐と鱈だけ。静かなお鍋だ。

わたしたちの生活に「食事」というものは欠かせなくて、みんな同じように巡ってくる時間です。偉そうにグルメを語るひとなんていくらでもいますが、本当に普遍的な食事のシーンひとつひとつに物語を見出しているのは、とても素敵だなあと思います。

忙しい日々だけど、せめて食事だけはきちんと楽しんで、一食一食無駄にしないで生きたいなあ。

 

やわらかなレタス (文春文庫)

やわらかなレタス (文春文庫)

 

 

 

 

 

今週のユートピア*2017.6.4〜6.10

 

生活の中にはお気に入りのものだけを置いて過ごしたい。 自分にとって心地のよいもの、美しいと思うものだけを集めた理想郷=ユートピアを作りたい。

そんな想いを込めて、今週に見つけたものやニュースのなかで、特にお気に入りのものを紹介します。

 

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ソフィア・コッポラ×カルティエ 短編ムービー公開

 

どんなに月並みと言われようと、「好きな映画監督」を聞かれたときに彼女の名前は答えるまいと意地を張ろうと、やっぱりソフィア・コッポラのムービーは永遠に好きだろうなと思います。

そんな彼女を招いて制作されたのが、カルティエの新作ウォッチ「パンテール ドゥ カルティエ」の発売を記念したショートムービー。

主演にコートニー・イートンを据え、”パンテール ウーマン”の響きにふさわしく、快活でグラマラスな映像となっています。カルティエの時計には正直、全然興味がなかったのですが、大胆な華やかさとジュエリーのような繊細さはとても気品があって、憧れが生まれてしまいました。

公式サイト:http://www.cartier.jp

 

ソフィアといえば、新作『The Beguiled』の公開も待ちきれない。イメージを見ただけで、やっぱり「ああいうの」が好きなんだろうなと思ってしまいました。 

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CIRE TRUDONから新シリーズ 香りのオーケストラ三部作

 

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フランス最古のキャンドルメーカー、CIRE TRUDUN(シールトゥルドン)の新シリーズ、「Les Belles Marieres(レ・ベル・マティエール)」♡

フローラル系の「Madurai」、フルーティ系の「Reddio」、ウッディ系の「Tadine」と全3種類がそろうキャンドルはまさに”香りのオーケストラ”。 ナイトブルーのガラス容器にあしらわれた、王室御用達の証、ルイ14世の紋章がなんともエレガントです。何時間でも眺めていられそう!

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販売サイト:http://www.belavista1989.com/cire_trudon_shopping.html

 

「Arts & Culture」ファッション×アートの新プロジェクト、「We Wear Culture」

 

Googleのアプリ「Arts & Culture」がファッションに焦点を当てた新プロジェクト「We Wear Culture」をローンチ。

「ファッションはただの衣服ではなく、文化だ」という理念のもと、メトロポリタン美術館コスチューム・インスティチュート、ヴィクトリア&アルバート美術館など180以上の文化施設と提携を結びました。これによって、展示やギャラリーを360度鑑賞できるバーチャル・ツアーが実現されたそう!

現在開催されているコム・デ・ギャルソン展やクリストバル・バレンシアガの回顧展も、日本にいながら楽しめます。ニューヨークまで飛んでしまおうかと血迷っていただけに、わたしにとってはかなりの朗報でした。

反面、ついにVRで世界中の美術作品を楽しむことができる時代になってしまった〜、といろいろな未来を危惧しつつ、これを機に「やっぱり実物をみに行きたい!」と思ってくれる人が増えますようにと願うばかりです。

 公式サイト:Google Arts & Culture