目には見えない大切なもの『マダム・キュリーと朝食を』

 

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「東の都市」へと流れて来た猫と、震災の年に生まれた少女・雛の物語。目に見えないはずの“放射能”を、猫は「光」として、少女の祖母は「声」として受け止める。 時空を自在に行き来し、見えないものの存在を問いかけた長編小説。

 

この物語の一番のキーはきっと、「放射能とエネルギー」。 舞台は東日本大震災から十数年がたった東京。 『家庭料理』の中に記されたキュリー夫人のメモや、主人公の母親がボイスメモに残したエジソンの記録など、実在するエネルギー史を数多く引用し、私たちの生活と「エネルギー」について考えさせられるストーリーとなっています。

作中では、原発のことをどちらかというと「悪」として捉えているようで、キュリー夫人ラジウムを発見した瞬間の描写が、どうしても悪夢の始まりのようであったことに、ほんの少しの恐怖を感じました。
その一方で、どこかフラットな見方もしているようにも感じます。

日本に住んでいる以上、原子力放射能の問題は一生考えねばいけないことだと思います。 物語は放射能をひとつのファンタジーのように扱っているけれど、現実はファンタジーではない。

消えない光があるなんて、きっと星みたいだろうね。
その光というやつは、妖精みたいに、それは素晴らしく光るらしい。マッチやロウソクや電球みたいに消えたりしない。
永遠に。

エネルギーは、人の目には見えないけれど、決して欠かすことのできないもの。 目を背けずに、共存する方法を考えなければと思わされる作品です。

 

 

マダム・キュリーと朝食を

マダム・キュリーと朝食を